東京を訪れて電車に乗ると、
大阪との違いに気づくことがいろいろとあります。
その中でも特に、乗客の方々が着ている服の色は、
案外、異なるようです。
昨年、約一年の間、横浜に住み、東京都内に通勤していました。
大阪の車内と見比べての感触的な話になりますが、
東京では、黒や寒色系の服を着る方の比率が、
圧倒的に多いように思います。
東京で電車に乗っていると、
ピンク色や青、青紫色の服を着ている人はいても、
オレンジ色やキャラメル色、えび茶色の服を着ている人を、
なぜか、あまり見かけません。
一方、大阪では、暖色系と寒色系のお色めの服を着た人が
ミックスで集まっているようです。
色彩学者の佐藤邦夫氏の調査結果によると、
近畿エリアに住む女性は、
東京の女性よりも、3倍の「冴えた赤」の色の商品を
買っているのだそうです。
また、好まれる紫色を比較してみても、
東京では青みよりの紫である江戸紫であるのに対し、
関西では赤みよりの紫である古代紫で、
東西で、好みの色みが微妙に異なっています。
その理由は、それぞれの地域に降り注ぐ太陽光線の
明るさと色みの違いにあるようです。
朝に写真を撮ると景色が青白っぽく写り、
夕方ごろに写真を撮ると景色が黄みがかって写るのは、
皆さんもご存じのことと思います。
地球規模で太陽の光の当たり方を見てみると、
次のイメージになります。
赤道付近が一番、太陽までの距離が短く、
大気圏も最短距離となり、
赤道付近には最も白色光に近い光(色温度が最も低い光)が届いています。
つまり、緯度が低い地域では、
とても明るく、白に近い光が注いでいます。
一方、南極や北極では、太陽からの距離が最も遠く、
大気圏の距離も長くなるので、
太陽光が地球の大気圏をくぐり抜けるまでの間に、
波長の短いブルー~パープル・ブルーの光が壊れて、
大気を染めながら入射してきます。
だから、緯度が高い地域では、
暗く、青みがかった光(色温度が最も高い光)が注いでいます。
このような極冠地帯では、青紫色のものが、美しく映えるのです。
ここで、話を日本列島に置き換えてみましょう。
北半球の中央部で全長2,800㎞にまたがって位置する日本は、
地軸の傾きも手伝って、
この、太陽光の明るさと色の影響を最も受けている国なのです。
年間を通じた太陽光の色みが、
次のイメージのように、ダイナミックに変化します。
おおまかにいうと、関東以北では寒色系の太陽光、
中部以南の日本では暖色系の太陽光となっており、
北から南に、太陽光の波長が長くなっていきます。
日本列島に降り注ぐ光の色みは、
次のイメージでグラデーションを描いているのですね。
さらに、人は、いつも見ている光に目が順応することもあり、
その地域での太陽の光と調和する色が、好まれるということなのです。
日ごろあまり意識する機会はありませんが、
日本は、世界に例を見ない、
色彩心理大国なのだそうです。