この夏はひさしぶりに、梅干しをつくりました。
梅雨時に、香りの良い大きな南高梅を買い求め、
すぐに五島列島の塩と千鳥酢でつけ込みます。
一カ月ほどして、土用を越えた頃にざるに並べて、
三昼夜かけて天日干し。
そして、一緒にできた梅酢に戻すと完成です。
買ってきた時には1キロもあった梅たちが、
3分の1ほどの容量の梅干しになります。
そういえば、今年は申年。
申年の梅は、縁起が良いと聞きます。
平安時代、村上天皇が申年の梅を
福茶に入れて召し上がったところ、
病気が治癒したのが由来といわれます。
できた梅干しは、三年目を越えた頃に
頂くのが良いそうです。
三年を経ると、梅干しの塩気が丸みを帯びて、
まろやかな味わいになるからです。
12年に一度の吉祥の梅を、
3年以上も熟成して頂く、
時間と素材がおりなす贅沢。
今の世の中は便利で簡単なものが、
身の回りにたくさんあります。
夜中でも、コンビニに行けば
食材の買い出しができるし、
ネットショップでは世界中の珍しいモノを
手に入れることができます。
家電にも、至れり尽くせりの機能が満載です。
でも、こんな便利な世の中なのに、
時々ふと、心が虚しくなる。
そんなこと、ありませんか?
これからは、一部のプロフェッショナルだけでなく、
より広く「手間ひま」に注目が集まる時代が来ると
私は密やかに信じています。
準備に時間と労力をかけたぶんだけ、
作り手の「心」がモノに紡がれていく。
買い手は、便利さというよりも、
作り手がモノに込めた「心」を味わう。
モノに込めた「心」は、真似ることができません。
だから、競合どうしは争うよりも、
互いの良さを認めあって、
ともに業界の地位を高めていく。
そんな時代は、すでに兆しを見せています。
モノを介して「手間ひま」や「想い」を
贈ったり、受け取ったりする時代に向けて、
私ができることは「準備をすること」。
前々から時間をとって、面倒くさがらずに、心をくばること。
私は、自分の生き方の中にもっと、
「準備」を取り込んでいきたいと思います。