およそ15年前、エジプトを訪れた時のこと。
カイロから車で30分走り、
ギザの大ピラミッドに足を運びました。
中学校の歴史の授業では、
大ピラミッドは今から4,500年以上前の古王朝時代、
クフ王の墳墓として造られた建造物と教わりました。
また、支配者が農閑期の民の食い扶持を確保するために
考案した国家事業、とも習いました。
タクシーでアプローチの坂道を駆け、
他の観光客と競争しながら
朝一番に入口に立つと、、、
砂まじりの空の中に佇む巨大な人工物に
心を奪われます。
270万個にも及ぶといわれる重さ3トンもの巨石を、
砂漠の真ん中にカミソリの刃すら入らないように積み並べた
とてつもないプロジェクト。
9世紀にアル=マムーンが
火薬を爆発させて開けたとされる穴の入口をくぐり、
通路を進んでいきます。
多くの観光客が入場したためか、
酸っぱい汗のような強い匂いの湿気に、体全体が包まれます。
中には巨大な石の壁に挟まれた通路や
用途不明の様々な大部屋が設けられていて、
薄暗がりの中に謎かけのように佇んでいます。
内部の壁には何の装飾もなく、
ネクロポリスの王家の谷で見かける
支配者の偉業を称賛したり、
来世での安寧を願う壁画は
どこにも見当たりません。
棺も副葬品も、ありません。
ただ、太陽の光が差し込まない、
石灰岩の岩肌がひたすら続く薄暗い構内。
あまりの現実離れした光景に、
この造作物に関わった人たちが、
いったい、何の目的でこのプロジェクトを全うしたのか?
答えが、わからなくなりました。
感じたことは、
王の偉業を誇るものでもなく、
公共の用途に供されるものでもなく、
今は失われた何か大事な目的のために建てられた、
ということでした。
そして、関わった人々の「これをつくるんだ」という情熱が、
静かに伝わってきました。
これだけの人と時間と労力をかけて叶えたかったことは何なのか
今はわかりませんが、
いつかその「ものづくり」の使命が明かされる日が待ち遠しいです。