そういえばこのごろ、
「舶来品」という言葉を、
あまり聞かなくなりました。
舶来品という言葉で思い浮かべるのは、
スーツの生地やネクタイ、
万年筆などなど。
それは、西洋で端正に手づくりされた
品々で、高級品を指す、
象徴的な言葉でした。
ところが、バブル経済の崩壊の頃から、
世界の生産拠点が
中国などの新興国に移ります。
それから次第に、
多くの品物が手ごろな価格になり、
同時に、舶来品という言葉も、
あまり使われなくなりました。
そして、舶来品は今、
「輸入品」という無機質な言葉に
吸収されてしまいました。
舶来品という言葉とともに、
遠い日の、異郷への憧れまでが失われたようで
ノスタルジーを感じます。
舶来品の魅力は、
品物を身につけたり使ったりすることで、
その色あいやかたちなどから、
日本にはない、独特の空気感を
身近に味わえることです。
そして、舶来品を大切に
使いつないでいる人には、
生きることの心地よさに敏感な、
品のある人柄がしのばれます。
だから、舶来品好きの人には、
自分と同じように舶来品を使う人を見かけると
親しみを感じ、言葉を超えたつながりを覚えるのです。