「40歳を過ぎたら、自分の顔に責任を持て」と言われます。
顔は心の窓。
とくに目や口は、
内面の性格や人格をあらわし、
その人がどう生きてきて、
これからどう生きたいのか、
饒舌に物語ります。
さて、顔はまた、食べ物からも
大きな影響を受けると言われているのを
ご存じでしょうか。
人骨から日本人の顔の変遷を調べた
自然人類学者の鈴木尚氏によると、
大名家や歴代の徳川将軍などの
貴族階級の人々の顔には、
次のような特徴があったといいます。
【将軍・大名の顔の特徴】
・顔が著しく長い(高顔)
・顔と鼻の幅が狭い(狭顔・狭鼻)
・鼻梁が高く、鼻筋がよく通っている
・上下のあごの骨が繊細
とくに、将軍や大名は、江戸時代に入って代を重ねるごとに
上下顎骨と咀嚼筋の発育不全が顕著になったといいます。
その背景には、選択した配偶者の影響も
あるでしょう。
しかし、それだけではなく、
将軍や大名が、庶民とは異なり、やわらかい食べ物を
日常的に食べていたことが大きな原因と言われています。
なぜ、やわらかい食べ物を摂っていたのか。
それは、単に美食をしていたということだけでなく、
毒殺や食中毒を防ぐために、食材を柔らかくなるまで
加熱調理したため、という説もあります。
さて、時代は移ります。
こちらは高校の卒業アルバムをもとに、
50年前と現代の、それぞれ18歳男子の
平均的な顔を、東京大学の原島博氏が
制作したものです。
【50年前の18歳男子の平均的な顔】
【現代の18歳男子の平均的な顔】
50年前の18歳よりも、現在の18歳のほうが、
細面で、顎も細くなっています。
現代の日本人は、封建時代の将軍・大名と同様、
「顔の貴族化」が急速に進んでいるのです。
原島氏のシミュレーションによると、
このまま時代が移れば、100年後の
18歳の平均的な顔は、
次のようになるといいます。
【100年後の18歳男子の平均的な顔】
上の顔、シミュレーションのために、
少し不気味で人工的な顔になっているのかも知れません。
時代によって、人の「美」の基準は変わるので、
この顔が良いか悪いかという議論は脇に置いておきます。
問題に思えることは、
食生活の影響から顎の骨が細くなるのに対して、
歯は遺伝子の影響を強く受けるために、
顎に合わせて小さくならないことです。
結果、歯並びに大きな影響が及びます。
歯の健康は、内臓の健康に直結してゆきます。
このことは、人相学において「顎」の部分が、
その人の晩年運を司るといわれることとも
関連を感じさせます。
そう考えると、100年後の日本人の顔は、
決して、明るい未来像とは言えないようです。
いま、食品メーカーや飲食店が、
消費者のニーズに応えるかたちで
消費者に良かれと思い、
舌触りがなめらかで、
歯ごたえの柔らかな食べ物を
供給してくれています。
しかし、先々の自分や大事な人たち、
そして未来の子どもたちの健康を思えば、
自分の顔への責任を超えて、
口当たりの良い食べ物や食べ方を
見直す時期に来ているのではないでしょうか。