先週の空き時間、満を持して(?)、
池井戸潤氏の「下町ロケット(1・2)」を
読んでいました。
昨年の秋にテレビドラマが放映され、
これまでは脚光を浴びなかったような、
下町の技術者たちの物語に、
右肩上がりの視聴率の伸びを見せた「下町ロケット」。
どんな人たちがドラマを観ていたのか調べてみると、
中小企業の経営者や社員の方だけでなく、
企業で部長職以上の経営職にいる方々が観ていたのですね。
”部長クラス以上”が一番、ドラマ「下町ロケット」を観ていた
中小企業の経営者に見られていた「下町ロケット」
(野村総研ショートリサーチ)
さて、小説「下町ロケット」は、
とある大田区の町工場が幾多の困難を乗り切って、
ついには宇宙開発と医療機器分野に進出するという
サクセスストーリーです。
主人公である町工場の社長、佃航平が、
欲望や不条理、疑惑などの苦難に悶々としながら、
自らの信じる経営を貫き、社員や取引先とともに、
新たな道を切り拓いていきます。
「下町ロケット」は、企業が持つ知的財産の
脆さと強さを教えてくれる作品でもあります。
特許を取ればビジネスは安泰・・・
という考えが幻だということを、教えてくれます。
小説に、コップをめぐる特許出願の話が
喩え話として書かれています。
「コップ」というアイテムについて特許を出願する際、
説明文に「ガラス製の、底に蓋が付いた円柱形の容器」、
と定義を記載するとしましょう。
すると、その特許を取得しても、
立体柱型のコップや、アクリル製のコップなどは
上の特許の権利内容に抵触しないので、
競合に知恵をハックされた上、市場を奪われてしまう・・・
ということにります。
これは極端な事例かもしれません。
しかし、記載する文面の言葉の練り方に隙があると、
せっかく手間暇をかけて取得した特許が、
会社にリスクをもたらすのです。
大企業ならば、複数の特許を出願・登録するという
力技で、この難局を乗り切ることができるでしょう。
しかし、中小・零細企業は、
多数の特許を出願し、抱えておく余裕はありません。
特許侵害訴訟やシェアの争奪によって、
せっかく生み出した利益が、
つかの間に吹き飛んでしまいます。
このようなリスクを避けるために、
試作品が完成してから特許出願の準備にかかるのではなく、
商品開発の最初の段階から十分に検討すること、
そして、どこまでを特許で守る範囲にするのか、
十分に吟味しておくことが大事になってきます。
中小企業には中小企業の
特許の戦い方があるのです。
悲しいことですが、技術力や情熱、
経営者の人徳だけでは、
経営と社員を守れないことがあります。
たとえ中小・零細企業であっても、
厳しい生産競争に耐えうる知財への理解が、
今、求められているのです。
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