技術開発の背景にあるDNAの違い

現代の、とどまるところを知らない技術開発の進化は、
自然に対して人間が「手を加えること」によってこそ価値が生まれる・・・
という西洋哲学が根底に流れていることについて、
以前のブログで書きました。

そして、そのような技術のあくなき進化は、必ずしも
人の幸せをもたらすものになっていない
、とも書きました。

このままいけば、多くの人にとって
幸せも豊かさももたらさない技術開発が行われ、
やがては自然環境を破壊し、
人々の暮らしを破壊し、
「見えないもの」を大切にするという、
人の心の豊かさを破壊するのかも知れない。

そのように考えていたころ、
日経テクノロジーオンラインに、
興味深い取材記事が紹介されていました。

日本の家電メーカーが凋落した理由
アレックス社長、辻野 晃一郎氏に聞く | 日経テクノロジーオンライン

世界最高の性能と品質を実現した
日本の家電メーカーが、かくも凋落したきっかけは、
「インターネット」の出現にある、と辻野氏は語ります。

インターネットが存在しなかったオフラインの時代、
日本は耐久財だった家電の性能と品質にこだわり、
「メイド・イン・ジャパン」という信頼のブランドを築き上げ、
多少高くても製品を買ってもらえる状況がありました。

しかし、インターネットがすべてを変えてしまった、
と辻野氏は言います。

インターネットが普及した後は、
発売の初期段階では品質にこだわらなくても、
ソフトウェアがインターネット経由で
アップデートできるようになりました。
だから、市場に出た後に製品が「進化」するのです。

日本のものづくりは、オフラインの時代に強みを発揮しました。
工場から出荷する段階で、完璧さを要求されたからです。
しかし、コンプライアンスを過度に気にかけ、
このスピードに対応しきれないため、今、
凋落の危機に瀕しているのではないか、
というのです。

また、辻野氏はGOOGLEでの仕事を通じて、
意思決定のスピードや企業トップのフットワークの軽さが
圧倒的であることに気づきます。

まさに、インターネットの時代に対応した組織運営が、
そこにはありました。

話は、戻ります。

日本のものづくりにおける経営は、
まるで農耕民族的です。
自然に寄り添うように地を耕して種を植え、
祈りとともに大切に育み、収穫の時を迎える。
長老のもと、根回しと和を大切にする。

一方、今のインターネットの時代に
隆盛を誇っているのは、
狩猟民族型の経営です。
必要な人間でチームを組み、
エサや罠を仕掛けて獣を待ち伏せ、追う。
狩りの中では、意思決定を素早くしないと、
獲物に逃げられてしまいます。

日本においても、社内公用語を英語にしたり、
雇用を流動化したり、能力主義の考課を導入したり、
といった試みは、盛んになされています。
しかし、農耕民族はどこまでも、農耕民族なのです。
付け焼刃的に、狩猟民族になることはできません。

日本のものづくりが岐路に立たされている理由の一つには、
農耕民族と狩猟民族のDNAの違いを知らないまま、
この戦いに巻き込まれているということがあるのではないでしょうか。

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