数年前、かつて仕事をご一緒させて頂いた、
とても尊敬するデザイナーの方から頂いた年賀状に、
次の一筆が添えられていました。
「昨今、体調が思わしくなく、年賀状準備のための
体力に衰えを感じるようになりました。
もちろん、今すぐに、という訳ではございませんので、
ご安心ください。
そのような事情から誠に勝手ながら本年を持ちまして、
年頭年始のご挨拶を控えさせていただきたく存じます。
どうか悪しからず御了承のほどお願い申し上げます。
皆さまのますますの御繁栄をお祈り申し上げます。」
その方はすでに70歳を過ぎられ、あとで伺ったところによると、
その前年に大きな手術をされていたのでした。
「最後の年賀状」を、どのように印象良くお届けするか・・・
相手を思いやって温かいメッセージを寄せてくださった
その方のことは、賀状のご返信を頂かなくなった今もなお、
強く印象に残っています。
その方がご存命なのかどうか、
お電話で確認するほどの距離感ではなく、
ただ、お便りで安寧をお祈りするばかりです。
一方、「相手の福を願う」年賀状に、
ご自身の末期の病への恐怖が綴られた、
「最後の年賀状」を頂いたこともあります。
「最後の年賀状」は、差し出して下さった方がどう生きたいのか、
相手にどのような印象を残したいのかを、雄弁に物語ります。
人は生きている限り、自身のイメージを変えていくことができます。
しかし、「最後の年賀状」ということになると、そうはいきません。
有終の美を背中で示して下さったその方への好意は、
これからもずっと、感謝とともに続いていくと思います。