小説「下町ロケット」の中で、最も心を動かされたシーンは、
心臓弁の開発を任された若手社員が性能向上に煮詰まり、
自分たちの仕事が何なのかを確かめるために、
共同開発先の医科大学を訪ねたときの風景です。
小児病棟には、重い心臓病を抱える幼い子どもたちが
医療の救いを待っています。
そこで心臓弁の移植手術の現場に立ち会ったふたりは、
緊張感というものではない命の尊厳を目の当たりにし、
自分たちの仕事が何なのか、誰のために努力しているのか、
気づいたのでした。
そこからのふたりは、困難をものともせず、
驚異的な集中力で、
心臓弁の開発を成し遂げていったのです。
ピーター・F・ドラッカーは、著書
「現代の経営(Practice of Management)」の中で、
3人の石切工の逸話を紹介しています。
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作業中の石工3人に、「何をしているのですか」と訊ねたところ、
一人目の石工は、「生計を立てているんだ」と答えました。
二人目の石工は、「この地域で一番、いい石工の仕事をしているんだ」と答えました。
三人目の石工は、夢に目を輝かせ、「大教会を建てているんだ」
と答えました。
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心臓弁の開発に意味を見出した
「下町ロケット」の若い技術者たちは、
間違いなく「三人目の石工」になったのです。
ちなみに、ドラッカーはこの逸話について、
- 真の経営者は三人目の石工だ
- 一人目の石工は、報酬のために仕方く働いている。
経営者になることもない - 厄介なのは、二人目の石工だ
と言いました。
なぜ、二人目の石工が厄介だと
ドラッカーは言うのでしょうか?
続きは、次回に書きましょう。